●津市公契約条例は責任逃れ、「最低落札価格なし」で違法労働状態

津市公契約条例



津市入札結果 業務委託

※過去の予定価格や落札率は一切公開されない。分かっているのは「最低落札価格なし」だけ。

今までの審議では、「受注者の労働関係法令違反にはアンタッチャブル」。
今度の審議では「的外れ答弁」が出てきます。
本当に知らないのか?知っていてはぐらかしているのか?
委員が「最低落札価格を設定していないこと」にも言及します。

★★★


(令和2年度第一回審議会)

〇令和2年度労働報酬下限額試行案件の基本情報

①契約件名 三重短期大学警備業務委託
・受注者 株式会社丸元(市内本店業者)
・業務内容 三重短期大学及びこれに付随する物件の警備
・履行期間 令和2年5月1日から令和3年3月31日まで
・契約方法 地方自治法施行令第167条第1号による指名競争入札
・契約締結日 令和2年4月30日
・契約金額 月額412,500円(うち消費税及び地方消費税額37,500円)
・予定価格 月額684,200円(うち消費税及び地方消費税額62,200円)
落札率 約60.28%
※昨年度落札率 約58.57%
※昨年度契約金額 月額394,200円(税込)
※予定価格 月額669,600円(税込)
・入札者 6 (当方も参加していました → こちら)

②契約件名 津市芸濃庁舎日常清掃等管理業務委託
・受注者 有限会社三重伸明(市内本店業者)
・業務内容 日常的に芸濃庁舎内の床面、トイレ等の清掃を実施
・履行期間 令和2年5月1日から令和3年3月31日まで
・契約方法 地方自治法施行令第167条第1号による指名競争入札
・契約締結日 令和2年4月28日
・契約金額 4,936,800円(うち消費税及び地方消費税額448,800円)
・予定価格 4,936,800円(うち消費税及び地方消費税額448,800円)
落札率 100%
・入札者 4
※昨年度落札業者 本年度と同じ
※昨年度落札率 落札率 約99.0%
※昨年度契約金額 4,896,000円(税込)
※昨年度予定価格 4,945,090円(税込)

f.業務委託の入札結果は公表されない

津市では業務委託の入札結果は公表されません。 → こちら
四日市市や鈴鹿市では落札価格だけではなく予定価格や最低落札価格が公表されます。 → 鈴鹿市四日市市

例えば庁舎の宿・日直業務や清掃業務。
前年度の入札者数、落札価格,落札者は公表されません。
当年の入札に参加するために仕様書を取りにいくと「前年度の落札者と落札価格」を教えてくれます。
もちろん、予定価格や落札率などまったく分かりません。
分かっているのは「最低落札価格なし」だけ。

今回、試行案件についてだけ予定価格,落札率が開示されました。

当方が参加しているのが上記試行案件①
同様の「1ポスト・宿日直業務」は久居,河芸,芸濃,美里,安濃,香良洲,一志,白山の8総合支所。
毎年、同業者が情報収集のために入札に集まります。

指名は市内業者全員指名。
談合・連合はできない、予定価格は分からない,最低落札価格なしの「安い者勝ち」。
しかも、契約は1年限りで来年は「さらに安い者勝ち」。
今回偶然に予定価格が分かりましたが、その額の高さに驚いています。
同じような指名競争入札の清掃業務で落札率100%にはビックリ!

g.「最低賃金減額許可」の労働者は労働報酬下限額試行から除外?

・試行マニュアルの記述

津市
「昨年度の3件の試行案件の試行結果の報告。
   全労働者に対し、労働報酬下限額以上の労働報酬が支払われていることを確認。
   また、アンケートからは労働状況台帳の作成回数を減らしてほしいとの意見あり。

令和2年度については、労働報酬下限額を880円に設定し、2件発注し、今後2件を発注予定。

・昨年度のアンケート結果に基づき、清掃等単純作業による業務に限って労働状況台帳の作成を
   毎月から履行期間中に報酬が支払われる初回及び最終回の2月分(2回の提出)に変更し、
   発注済みの2件に適用。発注予定の2件については、業務内容を精査し、適用するか決定。

・令和2年度の試行案件のうち三重短期大学における警備業務については、
   受注者から従事する労働者に対し最低賃金の減額の特例(断続的に従事する者に対する適用除外許可書)の許可を
   労働局から受けたとの申出があったため、
   試行マニュアルに基づき当該労働者は本試行の対象となる労働者から除外

〇該当の試行マニュアル(平成31年試行マニュアル)を見ると
「※対象とならない者について
・ 家事使用人、同居親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者
最低賃金法第7条の規定により最低賃金の減額の特例を受ける者
   (使用者が都道府県労働局長の許可を受けている者に限る。)
・ 公契約に係る業務に直接従事しない者(一般事務員、材料の製造に従事する者)
・ 労働基準法第9条に規定する労働者でない者(ボランティア、会社役員)
・ 対象契約への従事時間が1か月あたり30分未満の者
・ 個人事業主(一人親方)及び指定管理」
※令和2年,令和3年の試行マニュアルも同じ。

これはチョットおかしい。

・基礎知識-断続的労働と最低賃金の減額許可

〇断続的労働

宿直日直業務のように「巡回などの実際業務」と「緊急対応のための待機」が繰り返される業務です。
拘束時間は長いけれど「実際の労働時間が短く待機時間の方が圧倒的に長い」業務です。
また、拘束時間中は常に緊急対応の可能性があるので、1ポストの場合は休憩時間が存在しません。→ こちら

そのため、基準法の「1日に8時間・週に40時間、8時間を超えたら休憩1時間、休日は週に1日」に反します。

そこで、労働局に申し出て「その業務について労働基準法の適用を除外してもらいます」。
労基法41条施行規則34条

これを断続的労働の適用除外許可といいます。
この適用除外許可をうけないで、業務を行わせると「8時間を超えた時点」で労働基準法違反となります。
※8時間/日,40時間/週は36協定で逃げられるけれど、「8時間超えたら休憩1時間」が逃げられません。

ただし、許可されるには次のことを満たさなければなりません(労働省通達)
・巡回回数は 6回以内、一巡回の所要時間は1時間以内で合計4時間以内。
・精神的緊張の大きい場所はダメ。
・危険な場所、環境(温度,湿度,騒音,粉塵濃度など)が有害な場所はダメ。
・拘束時間は12時間以内(但し勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠ができるときは 16時間以内)。
・勤務と勤務の間に10時間以上の休息期間が必要。
(但し、勤務中の夜間に継続して4時間以上の睡眠が与えられるときは8時間以上の休息期間が必要)。
・休日は一カ月に2日以上。その代替要員が確保されていること。
   休日は休息期間に24時間を加えた継続したものであること。
・勤務場所が一つで、そこに常駐する(1カ月以上)場合であること。
・夜間に睡眠を与えるときは充分な睡眠ができるような場所と寝具が備えつけられていること。

〇断続的労働に従事する者の最低賃金の減額の特例許可

断続的労働は待機時間が長く実労働時間が短いので全体として考えると労働強度が低くなります。
そこで、実労働時間を100%,待機時間を60%と評価します。
その結果、時間当たりの賃金は最低賃金より安くなります。
これも、労働局へ申請して許可をもらわなければなりません。
これを「最低賃金の減額の特例許可」といいます。(最低賃金法7条4号

断続的労働の適用除外許可はその業務についてのものですが、最低賃金の減額許可は労働者個人に対するものです。労働者一人一人について許可をもらわなければなりません。

例えば、
・1ポスト,17:00~翌8:30,平日の宿直業務
・巡回回数6回(1巡回60分以内)
・A/所定定労働時間 → 15.5時間/930分(休憩なし)
・B/実労働時間 → 185分、C/手待ち時間 → 745分
・最低賃金 → 902円(2022年三重県)

減額できる上限は
・(手待ち時間×0.4)÷所定労働時間×100=745×0.4÷930×100≒32.04% → 32.0%(減額率)
※減額率は「%の小数点第第2位以下を切り捨て小数点第1位まで」。
※手待ち時間は60%評価 → 40%を減額 → 所定労働時間1時間あたり何%減額したか。

賃金の下限は
・最低賃金×(1-減額率)
・上の例なら 902円×(1-0.32)=613.36≒614円 ※1円未満の端数を切り上げ

支払わなければならない日当の下限は
・賃金の下限額×(所定労働時間+深夜労働時間×0.25)=614円×(15.5時間+7時間×0.25)=10591.5円
・つまり、日当は10592円以上でなければならない。

・「なぜ労働報酬下限額試行の対象から外すのか」不明

最低賃金減額許可は
「最低賃金で支払うのなら 最低賃金を減額率だけ下げてもいいよ」ということ。

津市の労働報酬下限額試行は「最低賃金より高い額を労働報酬下限額」を設定しているのだから
労働報酬下限額を減額率の分だけ下げて論じなければなりません。

具体的に言えば、
・この年の最低賃金は873円。
・許可を得た減額率は33.8%
・この労働者に適用される最低賃金は 873円×(1-0.338)=577.926円≒578円 ※1円未満の端数を切り上げ

・この年に設定した労働報酬下限額は880円
・労働者に支払わなければならない賃金=労働報酬下限額×(1-減額率)
   =「880×(1-0.338)=582.56 → 583円」※1円未満の端数を切り上げ

この583円が支払われたかどうかチェックしなければならないのです。
もちろん、22時~翌5時の深夜割増も必要です。

しかし、審議会ではこの労働者を試行から外し、578円でチェックしているのです。

〇この点についての質疑は次の通り(※議事録P2~)

委員
「減額後の賃金はいくらですか。」

津市
「現在の最低賃金が873円、減額率が33.8%、減額後の最低賃金額は578円以上となっています。」

委員
「時間給としては873円支払わなくてもいいということですね。」
※「最低賃金の873円は支払わなくてもいい → 578円以上を支払えばいい。」という意味。
   しかし、違う、チガウ!583円以上払わなければならないの!

-中略-

津市
「最低賃金法の適用を受ける労働者を労働報酬下限額の対象者としています。
   特例措置を受ける労働者の場合は、対象外となります。」

お笑いですね。
多分、どこかの市の試行マニュアルを「コピペ」したのでしょうが、
その市は「最低賃金を労働報酬下限額」にしていたのではありませんか?
労働報酬下限額が最低賃金と同じなら
「最低賃金の減額許可を受けた労働者は試行対象から外しても問題ない」ですからね。
津市は最低賃金より高い額を労働報酬下限額としていることを忘れていませんか?

津市もお笑いですけど、委員も不甲斐ないですね。

「最低賃金の減額許可があった場合なら、労働報酬下限額×(1-減額率)の賃金を支払わなければなりませんよ。」「最低賃金の減額許可があった場合に、なぜ労働報酬下限額試行の対象からはずれるのですか?」
「試行マニュアルが間違っているのではありませんか?」

こんな質問がでなければなりませんよ。
しっかりしてくださいよ委員さん!

令和2年第二回審議会

今回の審議会では「お馬鹿さん!」という質疑はありません。
内容を拾い上げると、

・公契約の対象に指定管理を加える。
・労働者性の高い個人事業主及び指定管理者が直接雇用し常駐する労働者を条例の対象労働者とする。

・業務委託における労働報酬下限額の対象案件は
   予定価格が1000万円以上で、かつ、競争により契約している特定公契約とする。
※これで市庁舎の宿日直業務や日常的な清掃業務は試行から外れる、予定価格や落札率はまた闇の中。

・労働報酬下限額は津市職員高卒初任給を勘案した額とする(業務委託、指定管理、工事共通)。

・労働状況台帳は受注者に加え、受注関係者(再委託業者、下請業者)に対しても作成及び提出を義務付ける。
・業務委託及び指定管理の労働状況台帳は、原則初回及び最終回の労働に係る労働報酬を提出対象とする。
・工事の労働状況台帳は、原則中間月と履行完了月の労働に係る労働報酬を提出対象とする。
※支払った賃金だけの報告。しかもそれを鵜呑み。対象を拡げても提出回数を検討しても意味はない。

その他いろいろ。
興味のある方は議事録を読んでください。

令和3年第一回審議会

h.「落札率が低い → 労働者にしわ寄せ」は当然なのに…。

「令和2年度の労働報酬下限額試行案件一覧」から「指名競争入札」の「業務委託」を抜粋しました。
令和2年第一回審議会の項で紹介した2例も入っています。
すべて、「市内業者全員指名」・「最低落札価格なし」・「毎年入札」の案件です。
もちろん、前年の予定価格や落札率は公表されません。
※審議会議事録P19の次にある資料
※金額はすべて10%消費税込み

番号件名予定金額落札金額落札率入札数指名数
津市芸濃庁舎日常清掃等管理業務委託4,936,8004,936,800100.00%417
三重短期大学警備業務委託月額684,200月額412,50060.29%630
津リージョンプラザ清掃業務及び
環境衛生管理業務委託
月額1,452,000月額1,169,85080.57%612
津市モーターボート競走場
場内清掃業務委託
25,942,84018,568,00071.57%326
津市モーターボート競走場
施設清掃業務委託
33,275,00011,587,95034.82%326
津市モーターボート競走場
駐車場等警備業務委託
1名当たり
日額11,000
1名当たり
日額10,800
98.18%530
津市モーターボート競走場
場内警備業務委託
29,367,00029,267,70099.66%339
津リージョンプラザお城ホール
舞台設備管理操作業務委託
月額1,430,000月額1,430,000100.00%124
令和3年度北道維担第1-38号
津地区街路樹維持管理業務委託
16,318,50011,000,00067.41%618

〇これを見て委員が質問します。(P3~)

委員
「業務委託は、業務に対する人員の数が把握できている中で、
   予定価格と落札金額との差が開いたという結果となっているため、
   労働者に十分な労働報酬が支払われているのかが気になりました。」

「必要人員が大体分かっていて予定価格を計算 → 落札率が低い → 労働者の待遇や賃金が下がる」という意味。

委員
「事務局からの説明にもありましたが、
   落札率は低かったものの、結果としては、労働報酬下限額以上の報酬は支払われたということですね。」

「労働報酬下限額以上を支払った → 労働者の待遇や賃金は下がっていない → 問題なし」という意味。
   下限額以上を支払っても健康保険・厚生年金未加入などの法令違反で経費は下げられる。
   そもそも、「下限額以上を支払ったかどうか」は受注者の報告だけで、それを津市は鵜呑みにしている。

津市
「業務委託の予定価格積算時においても業務を行うのに、
   労働者は何人必要というのを想定して積算していますが、
   業務を何人で行わなければならないというものを決めているものではありませんので、
   双方の積算の差が予定価格との差になったものと考えます。
   落札率が極端に低い案件については履行体制調査を行うなどの方法も検討したいと考えています。」

委員
「市が5人で積算していても事業者が3人で積算して入札した結果、
   落札率が下がるということも有り得るということですね。」

委員
「今の例の場合、市が5人で積算した業務を3人で行ったとすると、
   その3人に残業が発生する等のしわ寄せがいくことは考えられませんか。」

津市
「市は標準的な人数で積算しています。
   その積算に対し、事業者は積算より少数の熟練労働者を配置する等して事業費を圧縮しているという場合には
   問題はないものと考えています。」

ここで、落札率の低いのは「②の警備業務の60.29%」と「⑤の清掃業務 34.82%」。
   確かに、「⑤の清掃業務/落札率34.82%」なら津市の説明するように
   「通常人の3倍働く作業員」を配置すれば作業員数を減らせ経費を1/3にすることができます。
   しかし、「②の警備業務/落札率60.29%」は「1ポストの宿日直業務」で作業員の数が決まっています。
   「通常人の2倍働くスーパー警備員」を配置しても作業員を減らして経費を半分にすることはできないのです。

   津市の答弁はこの点をはぐらかしています。質問した委員もこの「はぐらかし」に引っかかっています。
   「この審議会ではまともな議論ができているのだろうか?」と心配になります。

   津市の見積もった予定価格から落札価格が大きく離れている場合は「それでやれる理由」が必ずあります。
   その理由が「受注者のボランティア・持ち出し」なら問題はありませんが、労働法令違反なら大問題。
   「積算の違い」で議論を終わらせる問題ではないでしょう。
   答弁する津市が「ずれている」のか「はぐらかしている」のか。
   どちらにしても、審議会の委員さんがしっかりしてくれなければ!

それにしても、
前年の予定価格・落札率は非公開、競争入札で最低落札価格なし。
これで、落札率が98%,99%,100%!
落札率が低いのも問題ですが、落札率が100%に近いのも別の意味で問題なのではないでしょうか?

〇その後、委員がさらに落札率の低い案件について質問します。(議事録P8~)

委員
「今回の話とは直接関係ないかもしれませんが、落札率が34.8%の案件がありましたので、
   この契約金額で業務をやっていけるのかどうかと心配になります。」

委員
「予定価格と契約金額に大きな差が出るということは
   予定価格自体が正しいのかということにもなると思うのですが、市はどのようにお考えでしょうか。」

ある委員が津市に批判的な質問をすると、必ずある委員が議論の方向をすり替える。
   初めの委員は「津市の予定価格は適正 → 落札金額が低い → 労働者にしわ寄せ → 法令違反」のつもり。
   次の委員が「津市の予定価格が高すぎる → 落札金額が低い → 労働者にしわ寄せばない」とすり替える。

津市
「業務委託の予定価格の積算方法は参考見積もりを勘案して設定する場合や、
   工事のように積算する場合もありますので、
   統一した積算基準がある工事とは異なりますが、予定価格の設定については適正に行われているものと考えます。
   また、当該業務については、
   落札率が低かったとしても今のところ報酬の支払や業務の履行は適正に行われています。
   今後、仕様どおりの業務が履行できていない場合は必要な措置を講じます。」

津市は当然「予定価格は適正」と答える。

委員
「同じような業務であれば予定価格も同程度になるのでしょうか。」

津市
「同程度になると思われます。」

委員
「当該業務は最低制限価格が設定されていないことから34.8%の落札率になったものだと思いますが、
   低い落札率であっても業務を適正に履行できるということであれば、
   この予定価格自体が正しいのかという話になると思います。
   そうならないように市は、落札率の低い案件について業務の履行確認をしっかり行っておくべきだと思います。」

ついに「最低落札価格なし → 安売り競争 → 落札率34.8% → 違法労働環境」に議論が進むぞ!
   しかし議論は「最低落札価格なし → 安売り競争 → 落札率34.8% → 履行確認が必要」という方向に。

津市
「御意見いただいたことについては、しっかり履行確認を行っていきます。
   また、本市には履行体制調査という制度があり、
   契約に当たって履行ができる体制が整っているかどうかを確認してから契約をするというものですが、
   低い落札率が続くような場合は当該制度の活用も考えております。」

「低い落札率 → 履行が不適正な可能性 → 履行確認が必要」で収まり、「違法労働」はまた闇の中に。

委員
「落札した事業者はこの金額で契約しなければならない事情もあったのかと思いますが、
   無理をして低い金額で落札した結果、業務の履行に支障が出た際に発注者の責任が問われる可能性もあります。
   工事の場合は低価格で落札した業者に対して、余分に技術者を配置させる等といった制度がありますが、
   業務委託についても低価格での落札について歯止めをかける方法を考えた方がいいかと思います。」

それを委員が追認して議論を終わらせる。

もう一度論評すると
   津市の説明は、
   予定価格は適正,落札率34.8%のこの業務はちゃんと履行されている,賃金支払も適正に行われている。
   だから落札率が低くても問題なし。
   その後に発言した委員さんも「業務が履行されているかどうかしっかりと確認してほしい」。

   いつのまにか、問題が「落札率が低い → 労働者にしわ寄せがいくのでは?」から
   「落札率が低い → 業務はちゃんと履行されているのか?」に変わってしまいました。
   委員さん!津市のペースに巻き込まれてはいけませんよ。それとも、津市に協力する側の委員さん?

   「業務が適正に行われている」から「労働者にしわ寄せがない」は言えません。
   「設定した下限額以上の賃金が支払われていること」と「労働者にしわ寄せがないこと」ば同じではありません。
   津市の答弁はいつも「ずれて」います。

   それとも「ずれたふり」をして、「受注者の労働法令違反にはアンタッチャブル」?
   それを問題にすると、落札価格が上で上がってしまう。
   それでは「最低落札価格なし・毎年入札」で「安売り競争」をさせられなくなる。
   安く受注させればそれだけ税金は節約できます。
   しかし、「ブラック事業者の法令違反,憲法で保障する人権侵害」の片棒を担ぐことになります。
   公契約条例はどこに行ってしまったのでしょう?
   そろそろ「目を覚まさなければならない」のでは?

   最後に発言した委員さんが「つい本音を漏らして」しまいました。
   「業務委託についても低価格での落札について歯止めをかける方法を考えた方がいいかと思います。」

   最低落札価格を設定すれば「歯止め」がかかり、すべて解決なのですがネェ。

i.その他

〇労働報酬下限額の変更(議事録P6~)
令和3年の労働報酬下限額は890円に設定していたが、
令和3年10月より三重県の最低賃金が902円になったので労働報酬下限額も902円とした。

委員から「最低賃金よりも高い労働報酬下限額を設定することではなかったのか?」

津市の答弁は「上がった巾が大きかったから」とかいろいろ言い訳。

いつになってもこの審議会は「支払われる賃金」のことだけ。
「受注者の労働関係法令違反はアンタッヂャブル」
「最低落札価格なし」による労働環境の悪化など議論される気配はない。

j.「 断続的労働の除外許可や最低賃金減額許可」を予定していない仕様書

以上のように、審議会の津市答弁から分かるのは「受注者の労働法令違反はアンタッチャブル」。
「労働法令違反なんかとやかく言わないから、安くしてよ!」
それが、仕様書からも分かります。

先に説明した「総合支所の1ポストの宿日直業務」。
これらの仕様書には「1ポストであること,就業時間,大雑把な業務内容」が書いてあるだけで、
細かい業務内容や巡回回数、その必要時間が書いてありません。

g で説明したように「1ポストの宿日直業務」は
断続的労働の除外許可を得なければ 8時間を超えた時点で違法になります。

そして「断続的労働の適用除外許可」が認められるには
「巡回回数は 6回以内、一巡回の所要時間は1時間以内で合計4時間以内」他の基準(労働省通達)があります。
※平成5年2月24日 基発110号

そのため、細かな巡回回数や巡回時間が分からなければ
「断続的労働の適用除外許可が出るかどうか」分からないのです。
つまり、この仕様書では「その業務を警備員に行わせた場合に違法になるかどうか」が分からないのです。

また、その業務が断続的労働の適用除外許可が得られるようなものであるとしても、
「手待ち時間と実労働時間」が分からなければ「最低賃金の減額率」が計算できず、日当が算定できません。
そのため、入札価格を決められないのです。

さらに、これらの許可は申請から許可書が出るまでに一カ月くらいかかります。
そして、許可の効力は許可書が交付されたときから発生します。 → こちら
申請はその業務を受注しなければできません。

しかし、入札は業務開始の1~2週間前。
そのため、落札してすぐに申請してもその業務開始までに許可を得ることができません。、
そのため、許可を得ないで業務を行うという違法状態が生じてしまいます。
※注意
現に受注している業者が再度受注した場合は間に合いますが、新たに受注した場合は間に合いません。

これらの点から考えると、この業務を発注する津市自身が
「断続的労働の適用除外許可や最低賃金の減額許可を前提にしていない」と言えるのです。

従来からずっと行われてきた宿日直業務です。
受注した警備業者が「断続的労働の適用除外許可や最低賃金の減額許可を得ていない」はずがありません。
この許可がなければ労働基準法違反や最低賃金法違反です。
この許可申請のペースとなった「細かい作業内容や所要時間,実労働時間数と手待ち時間数」はすぐに分かります。
それを仕様書に記載しないのはなぜなのでしょう。

『昔ながらの宿直日直業務だよ。断続的労働とか最低賃金の減額とか細かいことは言わないよ。
   そんなことはそちらで上手くやってよ。ウチとしては安ければそれでいいのだから。ヘッ、ヘッ、へ。』
これが本音なのでしょうか?

『公契約条例?「落札価格の下落により労働賃金や労働環境が悪くなることを防ぐ」というアレ?
   あれはちゃんと守ってよ。法令違反はしないという誓約書もあるよ。
   しかし、労働者が違反申告をしてこなければ津市は積極的に動かないからネ。

   労働報酬下限額? 試行案件でやっているアレね。
   あれは受注者に支払った賃金だけを書いてもらうだけだよ。
   「ウラを取る」ことなんかしないで、それをそのまま信じるから本当のことを書いてネ。
   そうそう、支払った賃金だけ書けばいいの。雇用保険や健康保険や厚生年金などは書かなくてもいいの。

   以前の予定価格や落札率?
   そんなものを教えるわけがないじゃない。
   「最低落札価格なし」だから頑張って入札してよ。このご時世、仕事がないよりましでしょう?
   ウチとしては「安ければ安いほど税金を節約できる」のだから。』

どこか間違っていません?
社員の給料を上げるために、非正規雇用や下請に負担を押し付けている大企業と似ていませんか?


〇同業者の方へのご注意

断続的労働の適用除外許可も最低賃金の減額許可も「その業務を実際に警備員に行わせてから審査が始まり、許可が出るまでに1カ月くらいかかります。」
そして、許可が出た日から適用除外や最低賃金の減額が認められます。
つまり、落札が決まり、実際に業務を開始してから許可が出るまで1カ月間は警備員に仕事をさせることができません。
許可が出るまでは使用者がその業務をやらなければなりません。
ここで使用者とは労基法10条の使用者ですが、少なくとも役職者でなければならないでしょう。
※労基法10条
「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、
   事業主のために行為をするすべての者をいう。」

これは、新たに受注する場合だけでなく、前年度受注してい者が今年度も受注する場合も同じです。
新しい許可が出るまでの一カ月は社長さんの出番となります。
この点については「厚生労働省の定めた手続の欠陥」です。 → こちらは必読です!

k.「最低落札価格なし」と「公契約条例の目的実現」を両立させる提案

・「最低落札価格なし」でも「労働関係法令に反しない価格以上」は当然

津市の業務委託の公共調達は市内業者全員指名です。
そして、最低落札価格を設定していません。
零細事業者は自分と従業員を護るため安売り競争をします。
労働者は分の生存を護るために文句を言いません。
その結果、「違法労働状態・劣悪な労働環境」が造り出されることになります。

一方、津市は公契約条例を制定し、受注者に労働関係法令順守の義務を負わせ、
津市に立ち入り調査権,是正措置命令権,契約解除権を与えています。

しかし、受注者の法令違反を是正するのには消極的。
「受注者から法令違反をしないという誓約書が取ってある。労働者は違反申告ができる」と他人任せ。

これでは、公契約条例は
「最低落札価格なし が違法労働状態を造り出している」という批判を避けるためのもの、
「単なる責任逃れ」と言われても仕方がないでしょう。

できるだけ安く落札させて「税金を節約したい」。
しかし、安売り競争をさせれば「違法労働状態を造り出してしまう」。

もし、「税金の節約」を優先させて「最低落札価格なし」を続けるのなら、
それに「労働関係法令に違反しない価格」という制限を加えるべきでしょう。

現在のように「安ければ安いほどいい。1円でもいい。」という無制限なものではなく、
労働保険,健康保険・厚生年金,有給休暇,最低限の交通費,法定教育,制服装備品消耗分などを含め
「その価格なら違法労働状態や劣悪労働環境が起こらない入札価格」にしなければなりません。
それは「最低落札価格なし」に内包される「制限」だと言えるでしょう。

・入札者は入札書に内訳書を添付

例えば、
「その入札価格で受注しても違法労働状態は起こらない」ことを示す内訳書を添付させる。

総合支所の1ポストの宿日直業務なら「内訳書の内容」は、
①許可されるであろう最低賃金の減額率から計算した労働者の日当
②その日当から算出される雇用保険料(事業主負担分),労災保険料
③その日当から算出される健康保険料,厚生年金保険料(事業主負担分)
④年間の有給休暇に相当する日当
⑤新任教育20時間 または 現任教育10時間分の手当
⑥年間に消費する制服・装備品の費用
⑦労働者の交通費
⑧寝具
⑨就業場所で消費する消耗品費
⑩警備業者責任賠償保険増加分
⑪標準的利益(入札額の〇〇%)

このうち、⑪は違法労働状態や劣悪労働環境を直接的には生み出さないので項目から外してもよいでしょう。
この利益のをいくらにするかが「最低落札価格なし」の部分です。
この部分が「0円でも1円」でもいいのです。

当方が現在受注している宿日直業務ならこのようになります。

〇平日 : 17時~翌8時30分の15.5時間
・拘束時間/930分,実労働時間(巡回6回)/185分,手待ち時間/745分,減額率/32.0%
〇休日 : 8時30分~翌8時30分の24時間
・拘束時間/1440分,実労働時間(巡回6回)/165分,手待ち時間/1275分,減額率/35.4%
〇2021年5月~2022年3月(11カ月分) : 平日/221日,休日/114日

j. 断続的労働の除外許可や最低賃金減額許可を予定していない仕様書」で説明したように、
以上のことが仕様書に明示されていなければなりません。

次は内訳書

①最低賃金で計算した労働者の日当(2021年/902円)

〇平日日当
・減額した時間給 =最低賃金×(1-減額率)=902円×0.32)=613.36円 → 614円
※1円未満切り上げ
・日当=減額した時間給×(所定労働時間+深夜労働時間×0.25)
=614円×(15.5+7×0.25) =614円×17.25=10591.5円以上 → 10600円

〇休日日当
・減額した時間給=最低賃金×(1-減額率)=902円×(1-0.354)=582.694円 → 583円
※1円未満切り上げ
・日当= 減額した時間給×(所定労働時間+深夜労働時間×0.25)
=583円×(24+7×0.25)=583×25.75=15012.25円 → 15100円

〇月額賃金 : (平日×221+休日×114)÷11月=(10600円×221+15100円×114)÷11≒369454円

②労働保険事業主負担分(6.5/1000+9/1000=15.5/1000)

・369454円×15.5/1000≒5727円/月

③健康保険料・厚生年金事業主負担分 → こちら

・3名で業務を行う → 1名分の月給 → 369454円÷3=123151円
・厚生年金5等級+健康保険(40歳以上/介護保険2号)8等級 → 10797円+6849円=17646円/名×3名 → 52938円/月

④有給休暇負担分

・1名につき10労働日/年 → 宿日直5回分 → 15100円×5回×3名÷12月=18875円/月

⑤新任教育

・1名につき20時間/年 → 902円×20時間×3名÷12月=4510円/月

⑥制服装備品消耗

・1名につき1年で10000円 → 10000円×3名÷12月=2500円/月

⑦交通費

・日額500円 → 500円×335日÷11月≒15227円/月

⑧寝具

・10000円×3名 → 30000円÷12=2500円/月

⑨警備室などで消費する消耗品

2000円/月

⑩警備業者責任賠償保険料増加分

・24000円/年 → 2000円/月

⑪利益 0円

※地域への恩返しのため利益なしで行わせてもらいます。

①~⑪の合計(税抜き)=475731円/月

これが「労働法令違反を行わない場合の最低限」です。

この内訳書で入札額(税抜き)が47万円/月なら入札無効。
入札額(税抜き)が47万5731円/月以上なら入札有効になります。

実際は10%~20%の利益を見込むから52万~57万円、消費税10%込みでは57万円~63万円になるでしょう。
令和2年度の予定低価格684200円(税込)は最低賃金が今より20円以上安かったときのものですが、
「利益35%」くらいに予定しているということになりますね。

このような入札方法にすると、今までのように入札者全員を集めて、
『さあさあ、今年の仕事だよ!一本で頼むよ!安い者勝ちだからネ!はい!アンタが落札!』
と5分で終了することはできません。
しかし、内訳書のチェックや、入札書と内訳書の突き合わせにそれほど時間はかかりません。
入札の翌日に落札者を発表する事ができるでしょう。
「商店街の年末ガラガラ福引」ではないのだから、これくらいの時間をかけてもよいでしょう。

なお、ブラック事業者なら健康保険料・厚生年金保険料を算入しても実際には保険に入らなかったり、
有給休暇分の日当を算入しても有給休暇を与えなかったりすることも考えられます。
しかし、そのような場合にこそ「労働者の違反申告」の出番でしょう。

もちろん、このような内訳を添付させても「受注者が違法労働状態を造り出すこと」は完全に防げません。
しかし少なくとも、「津市自らが違法労働状態を造り出している」という批判は避ける事はできます。

このあたりが「落とし所」ではないでしょうか?
市議会議員諸氏の健闘に期待しましょう。

・2022.02.03.追記

ちょうど2022年1月23日に津市会議員選挙があり34名の議員が選出されました。
各議員に上記内容の提言書を送付しておきました。 → こちら
次の入札まで3カ月を切りました。
さてさて、どのような反応があるでしょう。
このページで紹介していきます。

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